脚本家『山田太一氏』の文章は何故、凄いのか?

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脚本家『山田太一氏』の文章は何故、凄いのか?

あなたは山田太一氏をご存じでしょうか?

多くの名ドラマを生み出した希代のシナリオライターで1970年代には倉本聰、向田邦子と合わせて「シナリオライター御三家」と呼ばれていました。

本日はそんな日本を代表する脚本家、山田太一氏の作品を題材に「感情を突き動かす文章の書き方」についてお話したいと思います。

まずあなたは有名な作家の作品を読んで「なぜこの人はこんなにも感情を揺さぶる文章を書けるのだろう?」と、考えたことはありませんか?

もしくは有名な起業家のメールマガジンやセールスレターでも感情を突き動かされた経験があるかも知れません。では、山田太一氏をはじめ、何故彼らの文章は優れていると言われるのでしょうか?

彼らの文章が良い!と絶賛される理由

その理由のうち最も大きなものを一つ挙げるなら、「読者を自分の世界に引き込む力が文章にあるから」だと思います。

引き込まれるということはつまり「実体験を感じる」ということです。そしてその実体験はもちろんライティングテクニックによって手を加えられたもの。実体験を感じさせるために必要なテクニックの一つである「文章にリアリティを出す方法」に秘密があります。

素人が書く文章と、トップを走る人が書く文章。一体そこにはどんな違いがあるのか?

そのポイントについて、今からお話しをしていきましょう。

リアリティは文体によって作られる

こちらをご覧下さい。

山田太一氏のエッセイ「車中のバナナ」(新潮文庫『路上のボールペン』所収)の前文です。

初夏の伊豆に用事で出かけ、鈍行で帰って来たことがある。わざと鈍行を選んだ。帰ればまたあくせくしなければならず、3時間ばかりの電車の中だけ、のんびりしようと思ったのである。ところが案外その電車が込んできて、立っている人はいないが、私の横も前も人が座った。

斜め前の席が四十代後半の男で、熱海で乗ってきて、座るなり「ああまいった。今日はえらい目にあった」と誰にともなくいい、目を合わせた私の横の娘さんが忽ち捕まり、「いや今朝がた湯河原でね」とまいった話をはじめ、娘さんも結構聞いてあげる。

そのうち隣の(つまり私の前の席の)老人にも話しかけ、私にも「何処までですか?」という。「川崎です」と答えると「私も武蔵小杉に二年ばかり住んでたことがあってね」と話がつきない。いやらしくはない。気のいい人柄に見える。

ところがやがて、バナナをカバンから取り出し、お食べなさいよ。と一本ずつさし出したのである。娘さんも老人も受け取ったが、私は断った。「遠慮すること無いじゃないの」という。

「遠慮じゃない。欲しくないから」

「まあ、ここへおくから、お食べなさないって」と窓際へ一本バナナを置いた。

それからが大変である。食べ始めた老人に「おいしいでしょう?」という。「ええ」。娘さんにもいう。「ええ」「ほら、おいしいんだから、あんたも食べなさいって」と妙にしつこいのだ。暫く雑談をしている。老人も娘さんも食べ終わる。

「どうして食べないのかなぁ」とまた私に言う。

老人が私を非難しはじめる。「いただきなさいよ。旅は道連れというじゃないの。せっかくなごやかに話ししていたのに、あんたいけないよ」という。

たしかに大人気ないのかもしれない。私の態度が悪い、という人も少なくないだろう。

しかし、見知らぬ人から食べ物をすすめられて食べるという神経には、どこか他人というものにたかをくくっているところがある、と思う。別にバナナに毒が入っているというのではない。無論そういう場合もないとはいえない。しかし、その時にバナナに毒が入っている可能性は少ないだろう。

だから、毒の心配をしたのでは無いのだが、そんなに気軽に食べるものを貰っていいのだろうか、という思いが、どうしてもある。

よく知らない人の前でものを食べることがはずかしい、というような、四十男にあるまじき羞恥心もある。人にその種の好意はなるべく受けたくない(言ってみれば恩を来たくない)というケチな偏屈もある。

だから貰って食べた人を非難する気はないが、「なごやかになれる」人々がなんだか怖いのである。「同じ隣組じゃないの。我を張らないでさあ」などという戦争中の近所のおばさんの好意溢るる圧力を思い出してしまうせいかもしれない。

この話しをなぜここに掲載したのか?それはリアリティが「溢れ出ているから」です。

読んでいてわかると思いますが、この文章は「目に見えているかのように描かれている」ことに気付くはずです。大きな事件が起こっているわけでもなく、特別な何かがあるわけでもありません。

でも、車内での細かい状況がくっきりと描かれていて、リアリティが行間に滲み出ています。でも山田氏はおそらく事実をありのままに書いてはいないと思っています。

こう考えてみてください。

新人の俳優と、ベテランの俳優。

俳優の演技力を単純に比べたら、ベテラン俳優の方が優れている場合が圧倒的に多いです。ドラマや映画を見ていて、ベテランの演技力に圧倒され一気に入り込んでしまったという経験は誰にでもあるはずです。

その反対に、新人の俳優の演技力が足りずに「しらける」というか「入り込めない」という経験も少なからずしたことがあると思います。

でも、

「より現実に近いのはどちらか?」

これは多くの場合「新人の俳優」なのです。

実の所、「演技が上手い」と言われるベテラン俳優のような抑揚のある台詞回しは日常に飛び交ってはいません。演技と現実には大きな隔たりがあるのです。

一緒に生活をしていたら自然であるのが「新人の俳優」。

違和感を覚えるのは「ベテランの俳優」。

にも関わらず実際に主人公に共感して涙まで流してしまうのは、「ベテランの俳優」なのです。

この例から見てもわかるとおり、実際の事よりも、嘘の方がリアリティを感じるのが人間であり、文章でも同じことが言えます。実際のことを書くノンフィクションもいいのですが、人を動かす文章には、誇大すぎるリアリティの方が適しているということです。

その工夫をして書いてこそ、読み手はリアリティを感じるようになるということです。

山田氏の文章から学ぶ:リアリティを演出するテクニック

では具体的には、どうすれば文章にリアリティが生まれるのか、先ほど掲載したエッセイにはどういうテクニックがあってリアリティを感じさせているのか?をお話ししていきます。

1.具体的に詳しく描写する

読み手にリアリティを感じさせる最も有効な手段は「具体的に詳しく描写をする」ということです。詳しく描写をすることで読み手はその現場にいるように感じ、情景を勝手に想像します。

ですからリアリティを出すためには、起こったことを目に浮かぶように詳しく書き、読んでいる人が想像しやすいように言葉を並べていく必要があります。

例えば、「懐かしかった」、「楽しかった」と抽象的にまとめるのではなく、どのように懐かしさを感じたのか、どのように楽しかったのかを具体的に説明をする必要があるということです。

山田氏のエッセイを読むとわかりますが、あのエッセイは40代後半の男が列車に乗り込んできたところからストーリーが動き始めます。

普通であれば、「四十代の男が熱海で乗り込んで、私の斜め横に座った」と書くと思うのですが、山田氏は違います。

座るなり、「ああまいった。今日はえらい目にあった」と誰にともなくいい、目を合わせた私の横の娘さんが忽ちつかまり、「いや今朝がた湯河原でね」とまいった話をはじめ、娘さんも結構聞いてあげる。

この表現が入っています。

また、単に「バナナをくれた」とせずに、「ところがやがて、バナナをカバンから取り出し、お食べなさいよ、と一本ずつ差し出したのである」というように具体的に描写しています。

具体的に描写することで読み手は、目の前にその人物、そのモノがあるかのように感じ取れます。ただ、何もかも詳しく書いてしまうとそれはそれで焦点の絞れていない文章になってしまいますので、最も言いたいことに限るべきです。

2.意識して現在形を使うこと

読み手の目に見えるようにするために、現在形を使うのも簡単で上手な方法です。過去形にするといかにも過去のすでに終わった出来事のように感じられてしまい、話に入ってこれません。

反対に、現在形を使うと、目の前でその出来事がリアルタイムで進行しているように感じさせることができ、山田氏のエッセイも、ほとんどが現在形でストーリーが描かれていることがわかるはずです。

…娘さんも結構聞いてあげている。そのうち隣の(つまり私の前の席の)老人にも話しかけ、私にも「何処までですか?」という。「川崎です」とこたえると「私も武蔵小杉に二年ばかり住んでいたことがあってね」と話がつきない。いやらしくはない。気のいい人柄に見える。

もしこの部分を、

「娘さんも結構聞いてあげていた」

「私にも『何処までですか』 といった」

「話がつきなかった」

とすると、臨場感が薄れることに気が付くはずです。

実際に過去形の言葉を入れて最初から読んでみると、その違いに驚くと思います。それくらい現在形で話すということは重要であるということです。

3.他の人が気付かない細部を言葉にする

ほかの人には気付かない細かい部分を文章で描くのも一つの方法です。本当に体験した人だけが知る目のつけどころを探し、それを言葉にすることで文章にリアリティがグッと出るようになります。

読んでいて「この人は実際に体験したんだな…」と思える場所を描くこと。

「お腹が空いた」と書くにしても、ただ「腹がへって死にそうだ」と書くよりも、「仏壇の目の前に置かれたお餅を盗んで胃袋に収めたいところを必死にこらえた」と表現した方が相手に伝わるしリアリティが生まれます。

それ以外にも、「気付けば、その人はタバコを吸っている」とか、「いつも笑っていて白い歯を見せるから、逆にコイツは信用できない」という具合に描写することで文章にリアル感が生まれてきます。

4.読み手に発見させるように書くこと

すべてを語ることは書き手の義務。

こんな思考がある人をたまに見かけますが、そういう方の書く文章は硬いことが多いです。他人行儀というわけではないのですが、例えばセールスコピーの第一ステップで言うと目的は信頼関係を構築する事ですから、いかに相手の心を開くかが一つのポイントになります。

そこで使えるのが、「読み手に発見させるように書く」というテクニックです。

これを上手に使える方は文章にリアリティを出す事が出来ます。

というのも、書き手が全てを語ってしまうと、逆に読み手は信用しなくなるという傾向があるからです。例えば、「彼は優しい」と書かれていても、読んでいる人は信用しません。

自分で自分の事をしゃべる場合も同様です。「自分には才能がある」などとしゃべっても誰も聞かないと思います。

でも、それを「彼はどんなに忙しい時でも、困っている人を助ける癖がある」 と書くと読み手は「やさしさ」を感じ取り、「優しい」という事実を認識します。そこにリアリティを感じるのは、読み手は自分でその文章から「真実」を発見するからです。

5.目の前で動いているように書く

旭山動物園がなぜ爆発的な人気を集めているのか?

身も蓋もない言い方をしますと「動物が動いているから」に過ぎません(笑)

もちろん、無暗にディスっているのではなくこの話には続きがあります。

もともとつぶれる寸前だった旭山動物園は、極普通の動物園でした。

ライオン、キリン、シマウマ、カバ、シロクマ達がオリに入れられていてそれを人間が見学する。どこにでもある普通の動物園です。真面目に運営しているけれど、どんどん足並みは遠のいていき、廃業寸前だったその動物園は、ある一人のお客さんの一言によって生まれ変わりました。

「動物が動かないからつまらない」

そこに目をつけた園長が「動物を動かし、動いているところをお客さんに見せるにはどうすればいいか?」これをテーマに動物園を再建したら、一気にお客さんが集まったと言います。

文章に関してもこれと同じ事が言えます。

「このような花だった」、「このような服をきていた」と書くのではなく、「花が風に揺られている」、「雨でぐっしょりの服を勢いよく脱いだ」というように言葉に動きを出すとリアリティが出ます。

「疲れた」と書くのではなく、「足がガクガク震えて、50メートルも歩くと、その場に座り込むほどの疲労を感じていた」と書くほうがいいです。

そうすると、ただの疲れが「動きのある疲れ」になり、文章がいきいきするのと同時に、読み手はイメージできるから最後まで読み進めようとしてくれます。

6.『』を利用する

文章にリアリティを出す最も簡単な方法は、『』を利用する事。 つまり会話を文章に入れるということです。

特に会話の仕方に工夫をほどこすと、目の前で会話がされているように聞こえてきます。まるで映画のようにその文章は読み易くなって、山田氏のエッセイでは解説する必要も無いくらい、男は話し続けるし、会話がメインとなって います。

人と人との会話だけでなく、適切なタイミングで自分の考えを追記するとより会話にリアリティが出るはずです。

ただ、注意が必要なのが多用すると、読み手が疲れます。上手にメリハリをつけることと、改行が多くなりますから読む前に「この文章は長い」と思わせない努力が必要です。

まとめ

いかがでしたか?

ここまで、リアリティを出す6つの要素を見てきました。

1.具体的に詳しく描写する

2.意識して現在形を使うこと

3.他の人が気付かない細部を言葉にする

4.読み手に発見させるように書くこと

5.目の前で動いているように書く

6.『』を利用する

セールスライティングをする時にこれらの要素を取り入れると、お客様の反応が変わってくる事がわかるはずです。

今までどんなに一生懸命配信してもなんの反応もなかったものが、「今日の話は共感出来ます。」、「○○さんも苦労されてきたんですね。」という具合に、読者の感情を引き出すことが出来るようになるはずです。

人は感情にふれると自分の感情も出すものですが、時に文章の場合、感情を言葉で表せない人が多すぎるために、淡白な文を書く人が多いのだと思います。

ですが、今お話してきた要素を意識して書くことで、感情を言葉に込めることができるようになるはずです。そしてお客様はその言葉に反応し、あなたにレスポンスを返すようになってきます。

是非ご参考になさって下さいね。それでは!

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    About The Author

    平 祐一
    北海道出身1979年7月9日生まれ
    8年前、妻子アリ貯金ゼロという状況で突然無職になり、知識ゼロからコピーライターをはじめました。どうにかこうにか普通に生きてこれてます。

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